【経口憑依2】

 ――女の体を乗っ憑ったオレは、そのまま脇の林の中にもぐりこんだ。
 この街はまだまだ田舎で、大きな通りのすぐ側に森や林があたり前のように残っている。
 何にも使われていない、ただ木々が、文字通り林立する自然の園だ。

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 憑依した後、たいていの場合、オレはこういった林の中で事を進める。
 もちろんこれが危険であることは承知している。実際には、使える空き家のようなものだって把握している。それでもオレは枯れ落ちた紅葉を踏んで林に分け入った。

 なぜか――答えは簡単だ。
 オナニーは、

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 外でやるのが最高に滾るのだ。


■■


 木々の隙間を風が抜けて、通りのざわめきを運んでくる。
 背中合わせに聞こえる日常にノドを鳴らして、オレはゆっくりと服を脱いだ。
 飾り気のないトレーナーの下に、面白みのないブラウス。見ていてもさっぱり興奮しないフルカップのださいブラジャーまで手際よく外してしまうと、予想より一回り大きいバストが現れた。

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 指先をそっと胸に這わせる。憑依直後は動きづらいことも多いが、今回は相性がいいようだ。
 ほどよい弾力と絶妙のやわらかさで双乳に指が沈み込んでいく。秋風に震えるピンク色の突起を指先ではじくと、それだけで痺れるような快感が胸全体に広がった。

 ――感度も良好だ。
 いや……良好なんてものじゃない。

「ふぅ……っ」

 思わず声が漏れる。
 胸の形を確かめるように、てのひら全体で撫で回す。オレ自身を焦らすように、この体を高めていく。
 薄皮一枚むこうの優しい刺激はもどかしくて、直接的な快楽にはまだ遠いはずだ。だというのに、この体はもう昂ぶりはじめていた。

 息が荒くなる、体が火照っている、ただ撫で回しているだけの胸から、じんじんと痺れが全身に広がっている。ツンと自己主張強く頭を出す乳首をつまむ――たったそれだけで、悦楽が全身を疾走する。毛細血管を電流が走り抜けるような錯覚すら覚える。

「こいつ……このからだ、」

 まれに、いる。
 稀にいるのだ。触れただけで達するような、極上の肉体の持ち主が。

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 こいつに耐えろというのは酷な話だ。
 ズボンを脱ぐのも早々に、オレは枯れ歯の絨毯に座りこんだ。色気のない、清純派を気取る白い下着が、紅い地面の上でオレを誘っている。

 わかる――もう濡れてやがる。

「はァ……っ」

 下着の上から恥丘の形を指先でなぞり、中央の溝に指を沿わせる。布ごしにじわりと染みる蜜の香りが、指先から登って脳髄を冒していく。
 焦らさないでくれ。はやく触れてくれ。

「はは……」

 オレのものともこの体のものとも知れない悲鳴に応えて、下着の中に掌をつっこんだ。
 優しくするような余裕はもうない。オレにもないし、この体にもない。もう待てない――犯したいし、犯されたい!
 布きれ一枚足から抜く時間すら惜しい。下着をそのまま、掌だけを突きこんで、オレは彼女の秘処に指を立てた。

 ――ぐちゅり、

 きっと幻聴だ。
 けれどその音を確かにオレの指が聞いた。ただ胸に触れるだけの愛撫で、指先に濃密な淫液がからみつくほどこの体は興奮していたのだ。

「あっ……あぁ、」

 そんな敏感な体に、オレはあまりにも不用意すぎた。つきたてた指は淫蕩な肉畝に埋まり、胸の愛撫からじわじわと膣に充満していた快楽に一息に火をつけた。

「ふぁああっ!」

 着火した快感は瞬く間に全身を駆け巡っていく。腰が勝手に動いて、口を閉じることができなくなり、意識がかすんで、指先はそれでも止まらない。

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「ああっ、あっ、ふぁっ、うぁああっ!」

 白い下着の内側で、扇情的に指先が踊っている。淫肉をこねくり、膣口をほじくり、あとからあとから溢れ出す淫蜜をかきみだしていく。火のついた悦楽はもう全身を燃やしていて、焼かれた神経が悲鳴をあげている。脳に直接電流を流し込まれているような、経験のない淫感。白い濁った視界の中で、七色の光が明滅している。

「あっ、あぁっ、」

 もうやめてと声がする。女の快感に耐え切れないオレが言っているのかもしれないし、蹂躙されるこの体が言っているのかもしれない。

「あああっ、あっあっ、ああぁっ!」

 いずれにせよ、指先だけがオレの意思を離れて、別の生き物のように快感を貪っている。
 さあイケと。呑まれて、流されて、達してしまえと。嗜虐的な悦びに震えながら踊っている。

「あああああっ! あ、あ、あっ! あぁああっ!」

 同じ言葉だけを繰り返して、オレは彼女の、そしてオレ自身の指に隷属する。
 指先が叫んでいる。繰り返している。さあイケ。この淫楽にひれ伏せと。

 さあ。

         さあ。

                  さあ。


さあ!!


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「あぁああああ―――――――――――ッ!」




 腹の下から膨れ上がったそれは一瞬で全身の感覚を吹き飛ばし、脊髄から脳天を突き抜けてオレの意識を飛ばした。絶頂などという言葉ではとても追いつかない、暴力的な快感の奔流だ。
 世界が虹色に輝き、すべてが霞んでいく中、オレは半裸のまま目を閉じた。


■■


 目が覚めても、まだ憑依しているままだった。
 これはわりと珍しい。どうやら本当に相性がよかったらしい。今回はまだまだ楽しめるだろうか。
 この女の身元を調べようと携帯電話を開くと、新着メールがいくつか届いていた。

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 待ち合わせに来ない友人を心配する内容のメールが、三通ほど。どうやらこいつは友達に会おうとしていたようだ。
 約束の時間からは一時間が過ぎていたが、最新のメールは五分前。まだ間に合うだろう。

「はは……」

 最高の相性と感度。おまけにおもちゃまでついてくるなんて、幸運にもほどがある。
 どうやら今日はまだ終われない――

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 ――さあ、貶めよう。

<おわり>