ゼンマイ式倉庫

フカミオトハが適当にいろいろ置いたり喋ったりするブログです。 リンクフリーです。R18。

カテゴリ: 小説

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4.交合
(う、う、うう……ひどい、ひどいよぉ……)
 椋鳥玲は泣いていた。
 意識だけの彼女には涙を流すこともできないが、それでも確かに泣いていた。目の前で友人がいたぶられ、辱められ、挙句友人がそれを受け入れ――しかも、その陵辱全てを玲自身の肉体が行っているのだ。あまりのことに、魔法使いの感情はメーターを振り切ってしまった。
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3.乳辱

 ――保健室だ。
 目が覚めてすぐに、玲は自分がどこにいるのかを把握した。保健室には縁の薄い生活を送る玲だったが、そもそもこの校舎は魔法使いの領域だ。現在位置の把握なんて行動の前提のようなものだ。
(うごかない)
 そしてその次に、体の変調を確認した。足も、指も、眼球すら微動だにしない。ぎょろりと視線だけが動いて周囲を観察する――自分ではない誰かが、自分のカラダを使って。
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1.初陣
 椋鳥玲は魔法使いである。
 およそあらゆる神秘、あらゆる奇跡が否定され、伝説の中に押し込められる近代において、御伽噺と現実の隙間をすり抜けるように生きる執行者。火を生み、水を操り、風に乗る秘蹟の使い手だ。
「聞いてない! 聞いてない! こんなの聞いていない!」
 彼女は今、逃げていた。
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1.
「最近の亜香里、おかしいと思わない?」
 パフェの天井に鎮座するクリームをつつきながら、西園紅緒はいかにも深刻ぶってそう言った。誰にも言えない相談事がある――という神妙な前置きに少なからず緊張していた千景としては、なんだそりゃ、と言うしかない。
「おかしいって、何が」
「何。何って、なにって……全部だよ、全部おかしい」
「なんだそりゃ、まるでわからん」
 あきれ顔でカップを傾ける。酸味強めのブレンドコーヒーが喉をすべりおりて、千景は緊張感がほどけていくのを実感した。何事もないのならそれが一番ではあるのだ。
「おかしいよ、なんでわからないの?」
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 動画投稿サイトがインターネット上の一ジャンルとして確立してから、それなりの時間が経った。受け手と送り手の垣根がなくなり、誰もが『作り手』になれる時代――しかし、そんな中でも受け取ることしかできないやつはいるし、作り手たろうとしてうまくいかない人間も、もちろんいる。
 新垣圭太もそういう人間のひとりだった。
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