不況のあおりを食らって操業が止まり、持ち主が逃亡して取り壊しもされないまま宙に浮いてしまった工場――そういうおあつらえ向きの場所が、この町にはいくつかある。工業地域の再開発に失敗した市政のツケだ。
 そこは不良やら悪ガキやらのたまり場になっている。もちろん本来は立ち入り禁止だが、そういうルールを無視するから不良なのだし、悪ガキなのだ。
「ジンさん、三高の連中、まだ調子コいてますよ。ぶっとばしましょうよ」
「うるせえな。なんでもかんでも暴れようとするんじゃねえよ」
 というわけで、その日もオレはテリトリーにしている廃工場で仲間たちとつるんでいた。特別何をするわけじゃない。以前にはクスリをキメてる連中もいたが、オレが全員ぶっとばした。
 工場はそう広くない。教室二部屋分くらいのスペースがあるトタン壁の町工場で、半分ほどのスペースは何に使うのかもわからないでかい機械が、残りのスペースのうちやはり半分ほどは資材が埋め尽くしている。自由に使えるのは四分の一だ。しかし、このくらいがちょうどいい。ここに椅子やらテーブルやら懐中電灯やらを持ち込んで、夜毎にだべっているのだ。
 今日ここにいるのは三人ほど。どんなに少なくともこの程度の人数は集まる……だいたいはこのメンツだ。多い時は七人くらい、全員そろえば十人を超えるだろうか。だが、オレたちは暴走族ではないし、チームを名乗っているわけでもない。本当につるんでいるだけだ。
 ゆえに頭もいないが、強いてリーダーと呼べる人間が誰かといえば、それはオレということになるだろう。面倒な話だ。
「ボンは血気盛んだからな」
「なンだよ。みんなのんきすぎるんだよな」
 頬をふくらませて座り込むボンは、この中で唯一の中学生だ。ツンツンの金髪頭で、ジャラジャラとアクセサリをつけている。どれこれも高級品。こいつは親が金持ちなのだ。だからボン。ボンボンのボンだ。
「ボンは弱いくせに喧嘩腰がすぎるんだよ」
「ふん、ガリベンは言うことが違いますよね」
「正真の言うことよく聞いとけよ。ボンはそのうち大けがするぞ」
「なんスかジンさんまで!」
「ほら言われた。ボンはおこちゃまだからな」
「大して年もちがわんでしょうが!」
 この場にいるもう一人、正真はオレと同じ高校だ。中学も同じだった。眼鏡をかけて、ぴちっと整えた黒髪。正装じみたジャケットなんて来て、今も文庫本を開いている。
 ただしフランス書院だ。
 オレと同じ高校なんだから、インテリでもガリ勉でもない。そう見えるだけのアホだ。
「で、ジン、さっきの話どうするの?」
「どうって、なにが」
「気になるんでしょ。調べる?」
 言われて、オレは口ごもった。手持ちぶたさに缶コーヒーをゆすって、中身のないそれを踏み潰す。
「いや……別に」
「え、なに、なんでしたっけ?」
「今ここで話してたことを、どうして聞いてないのかなあ」
「いちいち馬鹿にしないと会話できないんですかねえ!」
「いちいち馬鹿なことを言うからねえ……」
 わざとらしく肩をすくめる正真にボンが殴りかかる前に、俺が金髪頭を手で制する。獣みたいな唸り声をあげて、ボンはつまらなそうにそっぽを向いた。
「彩音のことは、放っておいていい。オレらが口を出すと余計に面倒なことになる」
「ま、そうだろうね」
「……ああ、アヤさんのことっスか」
 得心したようにボンが頷いて、それから黙った。
 彩音――三笠彩音は幼馴染だった。
 家が隣同士で、家族ぐるみで付き合いがあったのだ。
 オレはガキの頃から他人を殴ってばかりのどうしようもない人間だったが、彩音だけはオレを見捨てず、オレをかばって、オレを守ろうとしてくれた。
 どうにかこうにか底辺高校の端っこにひっかかり、人を殴ったり人に殴られたりしながら悪ガキどものてっぺんに立ってもまだ、彩音はオレの幼馴染で居続けようとしている。今でも顔を合わせれば笑顔で話しかけてくるのだ。
 そんな彩音が明らかにおかしくなった。ここ数週間の話だ。
 たまに見かけても暗い顔をして、声も鬱々と沈んでいる。何があったのか聞いてみても何も話さない。なんでもないよ、大丈夫。いつも明るくてうるさいくらいだった彩音とは思えなかった。
 仲間うちでも、ボンと正真は彩音を知っている。正真に至っては同じ中学だ。だから彩音の不審について話してしまったが――本来ならば黙っているべきだ。
 オレたちが彩音に接触しすぎると何が起こるかわからない。クソみたいな連中が彩音を標的にするかもしれないからだ。だからここしばらくは、オレも彩音から距離をとっている。それが彩音の気落ちの原因かとも思ったのだが。
「気にしないって決めたなら、気にしないことだよ」
 正真の言うことはたぶん正しい。だいたい、十代後半なんて悩みの塊のような生き物だ。多少の気鬱にとやかく言うべきではないのだ。
「ま、あんまり続くようなら改めて相談にのってやんなよ、幼馴染としてさ」
 わかったことを言いやがって。
 オレは潰した缶を掌でもてあそんで、ひょいと放りなげた。機材にぶつかったスチール缶がカキンと冷たい音を立てる。
「ボン、あのゴミあとで片しとけ」
「じゃあ捨てないでくださいよ!」
 まったくその通りだ。オレは「今日は帰る」とだけ告げて、のそのそと工場を出た。すっかり夜も更けていたが、オレたちにとってはまだまだ宵の口だ。帰っても眠れるかあやしい。
「寒ィ」
 たまり場には暖房がない。どこからかストーブを持ってこないといけない。オレは白い息を吐いて家路についた。

**

 そして、目が覚めた。
 いつの間にか寝ていたらしい。ぼやけた視界には白いシーツが映っている。顔の下にやわらかい感触。枕だ。うつぶせで寝ていたらしい。健康に悪いぜ。
「んぐ……」
 起き上がる。ばさりと長い髪が落ちて、オレの視界を遮った。うっとうしい。指で払って、軽く伸びをする。なんだか全身がダルいような、不思議な感じだ。カラダの動きに従って、たぷんと大きな胸が揺れた。おお、眼福。
「…………」
 あん?
「なんだこりゃ」
 手でつかむ。小さな掌の中でぐにゃりと形を変えるソレはやわらかく繊細で、掌を蠢かすと「触られている」という感覚がちゃんとある。どうやらオレの胸らしい。
「はああ?」
 なんだこりゃ。なんだこりゃとしか言いようがない。胸があるぞ、オレに!
 あわてて立ち上がろうとして、盛大にこけ――なんだ、落ちる!?
「ぎゃあっ!」
 背中を打って息が止まる。ジンジンと衝撃が背骨から内臓に広がって、オレは何度か咳をした。どうにか起き上がって、ロフトベッドから落ちたのだと気が付いた。ロフト。そんなものオレの部屋にあったか?
「……どこだここ」
 オレの部屋じゃない。
 知らない他人の部屋だ。カラダを見下ろす。でかい胸。小さくて細い手足。長い髪。これもオレのカラダじゃない。
「なんだ、なんだこりゃ。どうなってやがる」
 わけがわからない。オレが、別人になってるってことか? 嘘だろ?
 現状を把握しようと部屋を見まわしてみるが、知らない部屋ってことがわかっただけだった。どうやらワンルームらしい。独り暮らしなのだろうか。ロフトベッドの下には机があって、その上にはノートパソコンとスマートフォンが置いてある。ほかには座卓と座布団くらいで、物の少ない部屋だった。洋服や食器の類は収納におさめているのだろうか。
「参ったな」
 夢かな。だとしたら、もう少しわかりやすい夢であってほしかった。でかい敵を殴り殺して終わるような。
 スマートフォンを手に取る。当然ロックがかかっていたが、指紋認証でクリアできた。科学の進歩はめざましいが、いいことばかりでもないんだな。こうして他人に体を乗っ取られたら、認証なんて無意味だ。……いや、こんな状況普通は想定しないか。
「えっと……」
 プライベートを覗き見ることになるが、まあしょうがない。構ってられるか。慣れない機種の操作に戸惑いながら、オレはどうにかそれを探し出した。契約者情報――つまり、このカラダの持ち主。
 二階堂琴子。どうやら高校生……同い年らしい。知らない女だった。正直、それがわかったところでどうにもならん。
 正真に連絡しようかとも思ったが、どう考えたってそれでどうなる話じゃない。オレはため息をついて机に座った。ノートパソコンを開いて立ち上げる。こっちにロックがかかっていたらどうしようもないな。
 SNSの方もちらっと覗いてみたが、大したことは書いていなかった。通話アプリの方は見るに堪えない誹謗中傷の嵐だ。特定の女子をよってたかっていじめているらしい。二階堂琴子は女子の、いわゆるカースト上位の人間らしかった。ろくでもねえなあこいつ。人のこた言えないが。
「……おっ」
 パソコンが立ち上がると、デスクトップ画面が表示された。ロックはかけていないらしい。不用心なことだ。
 だが、これもまた起動したからどうってこともない。風景画像が表示されたデスクトップにはいくつかのショートカットが散らばっていたが、何も不審なものは――

 ――『三笠』――

 ――なんだ?
 並ぶフォルダの中に、三笠と名前のついたものがある。三笠。いや、偶然か? 待て、この女……この女の学校、ひょっとして彩音と同じか?
 フォルダを開く、中には画像ファイルが山ほどと、動画ファイルが六つ入っていた。
「画像……」
 通話アプリの中身が、ふと脳裏によぎった。特定の女子を、よってたかっていじめている。ビリビリと瞼の裏が痺れている。ダブルクリック。画像が開く。
 画面いっぱいに広がった画像閲覧ソフトは、上半身裸で泣きじゃくる幼馴染の姿を克明に映し出した。
「な――」
 次の画像も。次の画像も。その次の画像も。全て彩音だった。全て、彩音の泣き顔だった。抑えつけられて、痛めつけられて、辱められる三笠彩音の姿だった。この画像、山ほどあるこの画像全部が。全部が!
「なんだこれ!」
 手が震える。歯が鳴る。目の前が真っ赤になる。全身の血液が沸騰してしまったようだった。動画――動画もある。嘘だろ。嘘だろ?
 動画ファイルもやはり彩音のものだった。全て短いものだ。女の声ではやしたてられながら自ら服を脱いだ彩音が、下着姿で土下座していた。泣きながらごめんなさいと繰り返している。
「……これか」
 理解した。
 彩音の憂鬱の正体、それがこれだ。こいつらが、こいつが、彩音をいたぶって泣かせているのだ。オレの知らないところで。オレが知らないと思って。
 オレのことをずっと守ろうとしてくれていた彩音を。
「……」
 心臓の奥の方から、ザワザワと感情の波がせりあがる。ぶっ殺してやりたい。素っ裸にして、犯しまくって、八つ裂きにしてやりたい。いや、実際にやってやろう。幸い情報は全て手元にあるんだ。
「……」
 残りの画像や動画を確認する気にはなれなかった。彩音だって見られたくないだろう。ただ、フォルダの中にテキストファイルがひとつだけ混じっているのが気になった。ひょっとしたら仲間の名簿とかだろうか。開いてみると、URLとパスワードらしき文字列だけがある。
「なんだこれ……」
 嫌な予感がした。ジワジワと心臓を絞り上げられているような感覚。URLをブラウザに打ち込んで直接飛ぶ。そこは、会員制のサイトだった。無修正とか投稿とか、いかがわしい文字が飛び交っている。パスワードを打ち込む。メインページに飛ぶ。あなたの投稿画像。あなたの?
 開くと、そこには、彩音がいた。
 裸の胸を、自分で揉んでいた。
 インターネットの、会員制の裏サイトに、彩音の動画がアップロードされていた。
 世界中に――晒されていた。
「ころっ……してやる!!」
 知らず、拳が机を叩いた。ノートパソコンが浮き上がるほどの衝撃。顔はわからないようにされている。声も加工されている。この動画から彩音には辿りつくまい。だが、そういう問題じゃない。
 殺してやる。殺してやる。殺してやる。だがその前に、落とし前をつけてもらわなければならない。
「二階堂琴子……」
 お前の人生を終わらせてやる。
 事情は知らない。斟酌もしない。年齢を勘案もしない。ルールなんざ知ったことじゃない。やられたらやりかえす。彩音の傷はオレの傷なんだ。
 生まれてきたことを後悔させてやる。お前のカラダでだ。オレの意識がなぜか今お前のカラダの中にあること。これはきっと神の采配だ。ぐちゃぐちゃにしてやる。
 オレはフォルダを閉じた。ノートパソコンはそのままだ。こいつにはこれから活躍してもらわないといけない。
 復讐のはじまりだ。

**

 考えなければいけない。
 復讐といっても、例えばこいつのカラダを殺したからと言ってそれで満足はできない。痛いのはオレじゃないか。こいつ自身を苦しめないと意味がない。彩音が受けたのと同じ、できればそれ以上の苦痛を、二階堂琴子に与える必要がある。
 それに、他にも考えなければいけないことがある。安直にやってはだめだ。
「……でも、まあ」
 とはいうものの、オレの頭じゃろくなことは思いつかない。正真やボンにしたって同じだろう。だからオレは、とりあえず脱いだ。
 彩音の受けた屈辱の何分の一かを、ひとまず味わってもらうのだ。
「おお……」
 二階堂琴子の胸はでかかった。グラビアアイドル並みだ。立って足元が見えないほどで、重力に従ってタプンと揺れる姿はいやおうにも興奮を刺激される。掌ですくうように持ち上げると、ふにゃりと柔らかいくせに、ずっしりとした重量感がある。雑誌や動画の知識によれば、乳輪は大き目のように思えた。
「売春とか、してんじゃねえのか」
 指先を肉の中に埋めて、感触を楽しむ。やわらかい……マジでやわらかい。類似の感触が思い当たらないくらいだ。多少力をこめても痛くはならなかった。グロテスクに変形する乳房は、妙に嗜虐心をかきたてる。
「ん……」
 鼻にかかったような声が漏れて、オレは思わず手をとめた。マジか。もう一度胸をぐにゅぐにゅとやると、意識せずとも口元から声がにじみ出てしまう。皮膚の上から脂肪の中にじわじわと染み入る感覚が、胸の内側で醸成されている。それは心臓のまわりにとりついて、水をつけすぎた絵の具が画用紙に染み込むように、カラダの内側に浸潤していく。
 気持ちいい……のか?
「ンう、ふ……」
 実際には、胸を揉まれただけでは快感は薄いとか聞いたことがあるけど、本当のところはわからない。オレは童貞だ。いや、でも、なんだ。気持ちいいかな?
「ンッ……」
 でかい乳輪に指を這わせて、柔脂肪に埋めるように押し込んでみる。かすかに勃起していた乳首はくにッと倒れて、胸のなかにズブズブと沈み込んでいく。指先をくるくると回して乳首を刺激しながら、掌全体で円を描くように胸をこねる。面白いくらい形を変える双乳から、フワフワとした感覚が湧き上がってくる。
 浮遊感――背筋が浮き上がってカラダから離れていくようだ。感覚は上へ、上へ、それなのに、心臓を包む快感らしきモノはジワジワと下がっていく。胸元からみぞおちへ、臍をくぐって、さらにその下へ。
「んぅ……はぁっ、ふう」
 もじ、と無自覚に太ももをすり合わせていることに気が付いて、オレは吐息を漏らした。ソレはカラダの奥の奥、中心部分にまで迫ってきている。
「こんな……簡単に、ふゥ、感じるもんか?」
 二階堂琴子が特別淫乱なのかもしれない。同い年の同性を裸にして喜ぶようなやつだ。くそ、思い出したら腹立ってきた。
 椅子に浅く腰かけて背を倒し、腰を前に押し出す。大きすぎる胸の向こうに現れた二階堂の股間は、丁寧に手入れされていた。少し濃いように思える繁みは逆三角形型に整えられて、口を閉ざした陰唇からはかすかに肉襞が覗いている。
「ふん……」
 指先で軽く触れる。トントンとタッチするようにすると、子宮で疼く快感の萌芽が痙攣したように思えた。
 さぐるようにスリットを撫で上げて、その隙間に指をもぐらせる。
「んっ……んぅ」
 また声が出る。どうにも我慢できない。潜り込んだそこは温かかった。指先を折り曲げて肉壁をこすると、ぴりっと鋭い――そのわりにやはりフワフワとした妙な感覚が腰のあたりを走り抜ける。
 中指を伸ばして陰唇の中を探るようにすると、奥の方にそれがあった。膣道への入り口だ。こいつはどうやら淫乱で最悪の女だが、処女だろうか。突き込むと、ヌルリ、とあっさり指を呑み込んだ。
「あっ……ん」
 ぶわっ、と臍の下で何かが膨らんだ。試しに指を折り曲げてみると、それがブルブルと震える。胸を揉んでいた時とは比べ物にならない。
「ふぅ、ぅ」
 くちゅっ、と手元で音が鳴った。淫乱な膣の中はぐしゅぐしゅに濡れている。一度指を引き抜いてみると、つうっと透明でねばついた糸が指先から伸びた。こいつ、準備万端じゃねえか。やっぱ淫乱だ。
 もう一度、今度は二本、指を突き込む。やはりあっさりと呑み込んで、二階堂琴子は悦ぶようにぐちゅりと鳴いた。
「はぁ、あっ、んう、うぅん」
 小刻みに指先を動かしながら、より快楽を貪るように腰を躍らせる。はたから見たらきっと相当エロいんだろうな。子宮に溜まる淫感はいよいよ濃度を増していく。吐く息すらピンク色に染まっている気がした。
「あぁっ、あ、ぁあっ、あう、うぅん」
 指を躍らせながら、ふと思いついて親指でクリトリスを弾く――
「あふぁっ!?」
 思わず腰が跳ねた。ぴしゃっと透明なしぶきが散る。神経を直接指で触ったみたいだった。こんなに強く感じるのか。
「あ、あっ、あんっ、んんっ、」
 指が止まらない。膣も、クリトリスも彼女自身のこぼす愛液でぐちゃぐしゃに濡れている。心臓が早鐘を打つ。これ、もうちょっと、もうちょっとで、
「あっぁっ、んんぁぅ、ふ、ふぁっ、ぁああっ!」
 神経が浮き上がる。快感が沈み込む。相反するふたつの感覚が、理性を分断する。オレはほとんど無意識のうちに、膣道を貪る二本の指とクリトリスを嬲る親指を触れ合わせるように――右手を握り込んだ。

「ぁああぁああああっ、んんぁあああああっ!」

 頭の中で、ぐぢゃりと音が鳴る。股間がつぶれて、大量の蜜があふれだす。噴きあがったそれは全身に降り注いで、二階堂琴子のカラダを快楽漬けにしてしまう。
「は、ぁ、ぁあ――……」
 長い吐息をついて、オレはぐったりと手足を投げ出した。ぴちゃぴちゃと滴の垂れる音がする。濃密な女の匂いが狭いワンルームに充満していた。
 イッちまった、みたいだ。
「やっぱ……淫乱じゃねえか」
 よろよろと立ち上がって、オレは座卓の上のそれを取り上げた。
 スマートフォンだ。
 録画モードになっていたそれには、二階堂琴子が貪欲に自分の女を弄ぶ姿が映っている。頷いて、オレはニヤリと笑った。これをインターネットにアップしてやる。ざまを見ろだ。
「……」
 だが、それだけでは足りない。全然足りない。
 部屋には玄関のほかに扉がいくつかある。そのうちのひとつは、にらんだ通りユニットバスだった。この部屋唯一の鏡に顔を映すと、上気してトロトロの女がいた。えろっ。
 だが弄ぶのはもういい。シャワーを浴びてスッキリすると、適当な服をひっつかんで着る。下着は面倒だ、つけなくていい。どうせ他人のカラダだ。
 スマートフォンで現在位置を確認する。助かった、すぐ近くだ。電車で一駅ほど。歩いていくこともできるだろう。一瞬迷ったが、駅は避けることにした。
「行くか」
 どこに行くって? 決まっている。
 不況のあおりを食らって操業が止まり、持ち主が逃亡して取り壊しもされないまま宙に浮いてしまった工場――オレたちのたまり場。
 そこには、この女を貶めて、突き落すための、大切なオレの仲間がいるはずだ。