侵略のデモン(1)←
そして、長耳族 。
トリオネイア総合学院の種族長たちが一堂に会するさまは、なるほど壮観だった。
居並ぶ重鎮に向けて、俺は書類を示す。すでに全員の署名がほどこされたそれは、学院の今後を大きく変える一枚だ。
「では――満場一致で、種族間の不均一な取り定めについての規則は可決となりました」
聞いているだけで酔いしれるような声がそう告げる。納得したように頷くもの、安堵の息をつくもの、疑わしげに眉をひそめるもの、下卑た笑みを浮かべるもの、その反応はさまざまだ。
だがいずれにしろ全ては決した。生徒会長ファティアナ・アーヴルヴァルトの尽力と根回しにより、かくて学院に蔓延していた種族間差別は撤廃されたのだ。
そして、学院は地獄となる。
ファティアナ・アーヴルヴァルトの体を侵略した俺がしなければならないことはふたつあった。
ひとつは彼女を破滅させること。もうひとつは「種族間の不均一な取り定めについての規則」――通称「平等法」の成立を防ぐことだ。
猶予は一日。
できることは少ないが、しかし不可能ではない。俺には魔眼があるし、そうでなくともファティアナは希代の魔術師なのだ。ざっと考えただけでも両手の指でも足りない程度の策が浮かぶ――もっともこれも、ファティアナの明晰な頭脳があればのことだろう。
その中から俺が選択したのは、最も簡単で安全な方法だ。もったいつけるほどのものじゃない。要は、書面を偽造したのだ。全く違う内容の書面を、まるで平等法のものであるかのように魔術で偽った。
だがこれには欠点がある。魔術を看破できるだけの眼力の持ち主がいたら、その時点でご破算だということだ。まあ、それでも一応、目的は達成できるのだが。
できることはやっておくに越したことはない。
採決当日の早朝。倉庫の中に、既に彼は来ていた。
しゃがみこんでもなお目立つずんぐりとしたその巨体。ギロリとこちらをねめつける威圧的な目。
「エルフ様かよ」
低い声には棘があった。毒というには直接的すぎる攻撃性が、これでもかと塗りたくられている。
尖耳族――オークだ。
野蛮で下卑た、知性のかけらもない暴力的な種族だと思われがちだが、実はオークは賢い。魔術的な素養も十分に持っているし、種族階級でそこまで下になるはずのない種族だ。 残念ながら野蛮で下卑ていることは風聞以上に真実で、それが全てを台無しにしているのだ。
竜族を除けば、エルフの魔術を見抜ける可能性があるのはこいつだけだ。
「わざわざ来てもらってありがとうございます、へリングさん」
「うるせえ」
オークの種族長であるへリングはファティアナを嫌っている。というよりも、オークのほとんどはエルフそのものをあまり良く思っていないらしい。その理由までは俺は知らない。
だがファティアナは知っていた。エルフとオークは源流を同じくする種族だ。どちらも濃密なマナによる影響を受けた「呪い子」に連なる種族らしい。
呪い子の祝福を享けたエルフと異なり、オークはその忌みだけを引き継いだ。仲が悪いのも当然だろう。
だから、へリングは平等法にも反対している。オークにとっては決して悪くない(まあ、いうほど良くもないが)規則なのにだ。魔術を抜きにしても、こいつは早々にどうにかしておきたい。
「へリングさんにはお願いがあるんです。今日の採決、賛成に票を投じることはできませんか」
「ふざけんじゃねえ。てめえのやることにはひとつも賛成なんざしねえよ」
予想通りの回答だ。へリングは損得を計算できないのではなく、損得を度外視している。自分の感覚や欲望に正直な生き物なのだ。だからまっとうな方法では説得できない。
説得するためには、へリングを満足させなければならない。
俺にはわかる。ファティアナはわかっていなかったが、俺にならば。へリングが抱くエルフへの嫌悪は、その実欲望に満ちている。彼らは自分たちと同じ祖を持ち、自分たちのように穢れなかったエルフを、嫌うと同時に尊び畏れているのだ。そしてやはり、それを貶めたいと思っている。
歪んでいる。
だとすればこの男を落とすのは簡単だ。その歪んだ劣情を満たしてやるだけでいい。
「わかっています。ですが、話だけでも聞いてください」
「だから――」
いらだつようなへリングの言葉は、
「――あ……え?」
途中で途切れざるを得なかった。
朝の冷えた空気が股の下からはいりこんでおなかのあたりを撫でていく。俺はぶるりと尻を震わせて、スカートをつまむ手をもう一度持ち上げた。
へリングの目には、ファティアナの秘所がはっきりと見えているはずだ。見るだけでその触感を錯覚する、やわらかく清らかな無毛の丘。きのうの夜、俺自身の手でじっくりと検分させてもらった。間違いなく処女で、天然の無毛。神の手による造形だ。
言葉を失うへリングに、俺は一歩近づいた。あわてて立ち上がるオークはかわいそうなくらい戸惑っていて、この状況をどう解釈すればいいのかわからないでいるようだった。これもまた、彼らがエルフを神聖視している証明だ。
ファティアナ・アーヴルヴァルトがこんなことをするはずがない。
きっと今、へリングはそう思っているのだろう。
だから手をのばすことができないでいる。逆に言えば、背中を軽く押してやるだけでこいつはあっさりと倒れる。
もし、今、ファティアナに意識があったらどう思うだろう。これは彼女自身を汚す行いであると同時に、彼女の積み上げたものを崩すための最初の一手だ。泣いて叫ぶだろうか。それとも諭すだろうか。口汚く罵りはしまいが。
「私を捧げると言っても――断りますか?」
返事はなかった。その一言で目の色を変えた獣は、鼻息荒く襲いかかってきたからだ。
資材の上に華奢な体を乗せて、大きく股を開いたエルフの秘所に、オークの無骨な頭が吸い付いている。耳に障る水音が、びちゃびちゃと倉庫の中に響いていた。舌を這わせて舐めまわし、吸い付き、歯を立てる。思いのほか繊細で丁寧な愛撫だったが、優しさと比してその刺激は痛烈だった。
「あ、ん……んんッ」
ザラついた舌が秘肉を食むたびに、おなかの下あたりでバチリと何かがはじける。子宮が興奮して飛び跳ねているかのようだ。
「あ、はッ……うぅっ、あ、ああっ!」
執拗な舌責めが肉をとろかして、その奥の性感を直接舐めまわしている――そんな妄想が脳裏をかすめる。
女の肉体で男と交わるのははじめてではないが、これほどの快感を得たことはなかった。
きのうの夜にも思ったことだが、ファティアナの体は敏感なのだ。彼女は性知識に乏しいわけではないが奥手で、自分で慰めたことすらない――なかった、きのうまでは。
「ふゥッ、う、んうう……ッ!」
身をよじってかわそうにもへリングはがっしりと尻をつかんで離さない。蟻の門渡りから外周に沿うように舌が舐めあがり、頂点で震えるソレをちろちろと転がす。
ぞわり、とまだ何も入っていない膣が震えた。
ただでさえむき出しになった性感の、その収束点。かわいらしく縮こまったクリトリスの皮をはいで、へリングの舌が弄ぶように踊っている。ひと舐めごとに迸る淫激は膣を貫いて子宮を穿ち、全身の神経を痺れさせる。
「ひッ、ひぁっ、ああ、ああぁああッ!」
充血する淫芽をびちゃびちゃとこねくりまわして、へリングはくぐもった笑い声をあげた。何かする気だと思ったが、全身がくにゃくにゃになってしまって、まるで力が入らない。きのうもそうだった。この体は、性感にも絶頂にも無防備すぎる。
「まっふぇ」
せめて待ってと言いたかったが、それすらかなわない。唾液まみれの女芯はもう限界で、何もせずとも自ら震えているような気がする。膣にも子宮にも蜜があふれていて、ファティアナの性に幼い体はあますところなく淫気が充溢している。まるで破裂寸前の風船だ。指が震える。視界がかすむ。ここがどこなのかも曖昧だ。揺らぐ世界で、へリングの乱杭歯が、ぷちゅ、と震える淫芽に触れる感覚がいやに明瞭に
世界が真っ白に染まった。
こざかしい考えを笑うように突きたてられた黄色い歯はクリトリスの中心を甘く潰し、弾けた淫感が全身をかけめぐる。神経という神経を疾走した快感は膨らみ切った風船ごとファティアナの体を吹き飛ばし、残った脳と脊椎だけが、ピンク色の稲妻に感電して震えている。
なにもない。快感だけがカラダのすべてだ。
「あ……あぁ、ふぁ……」
涎をぼたぼたとこぼして、人語を失ったファティアナがぐったりと体を横たえる。かすむ視界の中で、やはり涎と愛蜜で顔をべとべとにしたへリングがいやらしく笑うのが見えた。
——やばい。
これほどとは思わなかった。これまでに味わったどんな快楽よりもキている。
「お前、マジかよ……」
笑いながらへリングがつぶやく。気づいたようだ。無骨な指を絶頂したばかりの秘所にもぐらせて、へリングは無遠慮にソコを開いた。
にちゃっ、と蜜に濡れた肉がこじ開けられる音がする。同時に、へリングが息を呑む音も聞こえた。奴には、執拗なまでに施された魔術の光が見えているはずだ。
感覚を、つまりは性感を倍増する魔術—―それの三重がけ。
ファティアナは確かに性に疎く、快感に脆いが、それだけで開発もされていない肉体がここまで感じるわけがない。これは俺が、ファティアナの知識と技術を駆使して、きのう一晩かけて念入りに準備した魔術式だ。
「大丈夫なのかよ、これ」
へリングの言葉ももっともだ。大丈夫なはずがない。こんな魔術のかけかたをして、後遺症が残らないはずがないのだ。三重がけなんて時点で既に異常。それを神経に直接作用する魔術で行うなんて狂気の沙汰だ。この体はもう二度とまともな性感を味わうことはないだろう。
それでいい。
いけすかない、小賢しい、エルフなんて種族そのものが腐った売女にはふさわしい肉体じゃないか。それに、その方が俺も楽しめるというものだ。こんなこと、自分の体には絶対にできないからな。
「ねえ」
興奮しているへリングが冷めてしまわないうちに、俺は声をかけた。なるべくいやらしく、誘うような声にしたかったが、そこまでの余裕はない――もっとも、何をしなくとも勝手にそうなったような気がする。
「つづきは?」
荒い息とともにこぼれた言葉に、へリングが笑みを深くする。あわただしく露出した陰茎に、俺はうっすらと笑った。
「い、いいのか、いいんだな。いれる、いれるぞ!」
凶器。
へリングの代物はそうとしか呼べないほど巨大で凶悪だった。あんなもので貫かれたら膣が裂けかねない。化け物かこいつは。
それでも淫乱なファティアナは笑顔を浮かべたまま股を開いた。重ねがけの淫術が膣をくつろげ、肉槍を待ち焦がれて涙をこぼしている。空いている――おなかの下に空洞がぽっかりと口を開いている。早くここを埋めてほしい。たとえこのカラダが裂けてもいい。
裂けてもいい――そのほうがいい。どうせ痛覚は魔術で消せる。俺は増幅した快感だけを受け取れる
のだ。肉体が壊れて苦しむのは俺じゃない。
「はやく」
声に、へリングは一度大きく吐息をついて、
痛覚を消しているにも関わらず、全身を猛烈な衝撃が貫いた。でかいハンマーで股間をたたかれたみたいだ。ぐらぐらと視界が揺れる。
「ふ――っ、ふっ、はっ、はあっ、」
次いで、その衝撃を軒並み吹き飛ばす快感の嵐が襲ってきた。一刺しごとに襲いかかる衝撃が三重がけの魔術で増幅され、未知の快感になって神経を駆け抜ける。
ファティアナ・アーヴルヴァルトはあまり性に触れて来なかった少女だ。無知というわけではないし、興味もそれなりにあるようだが、しかし機会がなかった。自慰すらほとんど経験のない、真面目すぎる優等生だった。
そのファティアナに、この巨根はいかにも凶悪すぎた。オークの体が動くたびに、膣が壊されるような衝撃と音が響く。
グジュッ、グチャッ、ブジュッ――
肉が掘削されていく。本来ならば声も出ない激痛だろう。だが、
「あっ、ああぁあっ、んぁあああっ!」
痛覚を消し、感覚を三倍増している俺には、それは気が狂うほどの淫感として襲いかかる。
神経全部が性感になって、ひとかたまりになったそれをまるごとしごかれているようだ。
「あぅ、あっ、あぁああっ! ああぁああっ!」
へリングが笑っている。醜悪な顔だ。憧れて、畏れて、そして穢したいと願っていたファティアナを貪る自分に酔っているのだ。ファティアナ・アーヴルヴァルトは美しく聡明な、おそらくはトリオネイアの至宝だ。きっと未来には何か大きいことを達成しただろう。それも、そんなに遠い未来ではない。
それを、こんな下卑た男に穢されて、貶められている。
俺がそうしている。俺がそうされている。穢しているし――穢されている。
「ああぁっ、あっ、あぁあっ!!」
突かれるごとに神経は感度を増していく。へリングの凶器が触れるすべての細胞が一斉に震え、それが伝播して全身が嬌声をあげる。腰のひとふりで絶頂し、次のひとふりでまた達し、イキ狂う細胞たちが沸騰して神経を圧迫している。
その苦痛すら――快感だ。
何かにつかまっていないと振り落とされてしまう。 へリングに抱き着いてその首に手を回し、まるで恋人同士のように密着して、ファティアナのカラダは何度も何度も絶頂した。
きっと彼女の人生でこれほどの絶頂は初体験だろう。それを繰り返し、繰り返し、延々と何度も。
その快楽が、烙印となってカラダに刻まれるまで。
「お、おぉお、おぉおっ!」
野獣のおたけびのような声が聞こえる。へリングが達するのだ。汚いオークの子種液が、聡明で可憐なエルフの才媛に注がれる。
ファティアナが、致命的に穢される――
「出して、なかにっ、ナカに出してくださいっ!」
「お、おおおおっ!」
「私をぐちゃぐちゃにして!」
ファティアナ・アーヴルヴァルトの体を侵略した俺がしなければならないことはふたつあった。
ひとつは彼女を破滅させること。もうひとつは「種族間の不均一な取り定めについての規則」――通称「平等法」の成立を防ぐことだ。
猶予は一日。
できることは少ないが、しかし不可能ではない。俺には魔眼があるし、そうでなくともファティアナは希代の魔術師なのだ。ざっと考えただけでも両手の指でも足りない程度の策が浮かぶ――もっともこれも、ファティアナの明晰な頭脳があればのことだろう。
その中から俺が選択したのは、最も簡単で安全な方法だ。もったいつけるほどのものじゃない。要は、書面を偽造したのだ。全く違う内容の書面を、まるで平等法のものであるかのように魔術で偽った。
だがこれには欠点がある。魔術を看破できるだけの眼力の持ち主がいたら、その時点でご破算だということだ。まあ、それでも一応、目的は達成できるのだが。
できることはやっておくに越したことはない。
採決当日の早朝。倉庫の中に、既に彼は来ていた。
しゃがみこんでもなお目立つずんぐりとしたその巨体。ギロリとこちらをねめつける威圧的な目。
「エルフ様かよ」
低い声には棘があった。毒というには直接的すぎる攻撃性が、これでもかと塗りたくられている。
尖耳族――オークだ。
野蛮で下卑た、知性のかけらもない暴力的な種族だと思われがちだが、実はオークは賢い。魔術的な素養も十分に持っているし、種族階級でそこまで下になるはずのない種族だ。 残念ながら野蛮で下卑ていることは風聞以上に真実で、それが全てを台無しにしているのだ。
竜族を除けば、エルフの魔術を見抜ける可能性があるのはこいつだけだ。
「わざわざ来てもらってありがとうございます、へリングさん」
「うるせえ」
オークの種族長であるへリングはファティアナを嫌っている。というよりも、オークのほとんどはエルフそのものをあまり良く思っていないらしい。その理由までは俺は知らない。
だがファティアナは知っていた。エルフとオークは源流を同じくする種族だ。どちらも濃密なマナによる影響を受けた「呪い子」に連なる種族らしい。
呪い子の祝福を享けたエルフと異なり、オークはその忌みだけを引き継いだ。仲が悪いのも当然だろう。
だから、へリングは平等法にも反対している。オークにとっては決して悪くない(まあ、いうほど良くもないが)規則なのにだ。魔術を抜きにしても、こいつは早々にどうにかしておきたい。
「へリングさんにはお願いがあるんです。今日の採決、賛成に票を投じることはできませんか」
「ふざけんじゃねえ。てめえのやることにはひとつも賛成なんざしねえよ」
予想通りの回答だ。へリングは損得を計算できないのではなく、損得を度外視している。自分の感覚や欲望に正直な生き物なのだ。だからまっとうな方法では説得できない。
説得するためには、へリングを満足させなければならない。
俺にはわかる。ファティアナはわかっていなかったが、俺にならば。へリングが抱くエルフへの嫌悪は、その実欲望に満ちている。彼らは自分たちと同じ祖を持ち、自分たちのように穢れなかったエルフを、嫌うと同時に尊び畏れているのだ。そしてやはり、それを貶めたいと思っている。
歪んでいる。
だとすればこの男を落とすのは簡単だ。その歪んだ劣情を満たしてやるだけでいい。
「わかっています。ですが、話だけでも聞いてください」
「だから――」
いらだつようなへリングの言葉は、
「――あ……え?」
途中で途切れざるを得なかった。
朝の冷えた空気が股の下からはいりこんでおなかのあたりを撫でていく。俺はぶるりと尻を震わせて、スカートをつまむ手をもう一度持ち上げた。
へリングの目には、ファティアナの秘所がはっきりと見えているはずだ。見るだけでその触感を錯覚する、やわらかく清らかな無毛の丘。きのうの夜、俺自身の手でじっくりと検分させてもらった。間違いなく処女で、天然の無毛。神の手による造形だ。
言葉を失うへリングに、俺は一歩近づいた。あわてて立ち上がるオークはかわいそうなくらい戸惑っていて、この状況をどう解釈すればいいのかわからないでいるようだった。これもまた、彼らがエルフを神聖視している証明だ。
ファティアナ・アーヴルヴァルトがこんなことをするはずがない。
きっと今、へリングはそう思っているのだろう。
だから手をのばすことができないでいる。逆に言えば、背中を軽く押してやるだけでこいつはあっさりと倒れる。
もし、今、ファティアナに意識があったらどう思うだろう。これは彼女自身を汚す行いであると同時に、彼女の積み上げたものを崩すための最初の一手だ。泣いて叫ぶだろうか。それとも諭すだろうか。口汚く罵りはしまいが。
「私を捧げると言っても――断りますか?」
返事はなかった。その一言で目の色を変えた獣は、鼻息荒く襲いかかってきたからだ。
資材の上に華奢な体を乗せて、大きく股を開いたエルフの秘所に、オークの無骨な頭が吸い付いている。耳に障る水音が、びちゃびちゃと倉庫の中に響いていた。舌を這わせて舐めまわし、吸い付き、歯を立てる。思いのほか繊細で丁寧な愛撫だったが、優しさと比してその刺激は痛烈だった。
「あ、ん……んんッ」
ザラついた舌が秘肉を食むたびに、おなかの下あたりでバチリと何かがはじける。子宮が興奮して飛び跳ねているかのようだ。
「あ、はッ……うぅっ、あ、ああっ!」
執拗な舌責めが肉をとろかして、その奥の性感を直接舐めまわしている――そんな妄想が脳裏をかすめる。
女の肉体で男と交わるのははじめてではないが、これほどの快感を得たことはなかった。
きのうの夜にも思ったことだが、ファティアナの体は敏感なのだ。彼女は性知識に乏しいわけではないが奥手で、自分で慰めたことすらない――なかった、きのうまでは。
「ふゥッ、う、んうう……ッ!」
身をよじってかわそうにもへリングはがっしりと尻をつかんで離さない。蟻の門渡りから外周に沿うように舌が舐めあがり、頂点で震えるソレをちろちろと転がす。
ぞわり、とまだ何も入っていない膣が震えた。
ただでさえむき出しになった性感の、その収束点。かわいらしく縮こまったクリトリスの皮をはいで、へリングの舌が弄ぶように踊っている。ひと舐めごとに迸る淫激は膣を貫いて子宮を穿ち、全身の神経を痺れさせる。
「ひッ、ひぁっ、ああ、ああぁああッ!」
充血する淫芽をびちゃびちゃとこねくりまわして、へリングはくぐもった笑い声をあげた。何かする気だと思ったが、全身がくにゃくにゃになってしまって、まるで力が入らない。きのうもそうだった。この体は、性感にも絶頂にも無防備すぎる。
「まっふぇ」
せめて待ってと言いたかったが、それすらかなわない。唾液まみれの女芯はもう限界で、何もせずとも自ら震えているような気がする。膣にも子宮にも蜜があふれていて、ファティアナの性に幼い体はあますところなく淫気が充溢している。まるで破裂寸前の風船だ。指が震える。視界がかすむ。ここがどこなのかも曖昧だ。揺らぐ世界で、へリングの乱杭歯が、ぷちゅ、と震える淫芽に触れる感覚がいやに明瞭に
「ひッぎ……あぁあああああぁああッ―———ッ!」
世界が真っ白に染まった。
こざかしい考えを笑うように突きたてられた黄色い歯はクリトリスの中心を甘く潰し、弾けた淫感が全身をかけめぐる。神経という神経を疾走した快感は膨らみ切った風船ごとファティアナの体を吹き飛ばし、残った脳と脊椎だけが、ピンク色の稲妻に感電して震えている。
なにもない。快感だけがカラダのすべてだ。
「あ……あぁ、ふぁ……」
涎をぼたぼたとこぼして、人語を失ったファティアナがぐったりと体を横たえる。かすむ視界の中で、やはり涎と愛蜜で顔をべとべとにしたへリングがいやらしく笑うのが見えた。
——やばい。
これほどとは思わなかった。これまでに味わったどんな快楽よりもキている。
「お前、マジかよ……」
笑いながらへリングがつぶやく。気づいたようだ。無骨な指を絶頂したばかりの秘所にもぐらせて、へリングは無遠慮にソコを開いた。
にちゃっ、と蜜に濡れた肉がこじ開けられる音がする。同時に、へリングが息を呑む音も聞こえた。奴には、執拗なまでに施された魔術の光が見えているはずだ。
感覚を、つまりは性感を倍増する魔術—―それの三重がけ。
ファティアナは確かに性に疎く、快感に脆いが、それだけで開発もされていない肉体がここまで感じるわけがない。これは俺が、ファティアナの知識と技術を駆使して、きのう一晩かけて念入りに準備した魔術式だ。
「大丈夫なのかよ、これ」
へリングの言葉ももっともだ。大丈夫なはずがない。こんな魔術のかけかたをして、後遺症が残らないはずがないのだ。三重がけなんて時点で既に異常。それを神経に直接作用する魔術で行うなんて狂気の沙汰だ。この体はもう二度とまともな性感を味わうことはないだろう。
それでいい。
いけすかない、小賢しい、エルフなんて種族そのものが腐った売女にはふさわしい肉体じゃないか。それに、その方が俺も楽しめるというものだ。こんなこと、自分の体には絶対にできないからな。
「ねえ」
興奮しているへリングが冷めてしまわないうちに、俺は声をかけた。なるべくいやらしく、誘うような声にしたかったが、そこまでの余裕はない――もっとも、何をしなくとも勝手にそうなったような気がする。
「つづきは?」
荒い息とともにこぼれた言葉に、へリングが笑みを深くする。あわただしく露出した陰茎に、俺はうっすらと笑った。
「い、いいのか、いいんだな。いれる、いれるぞ!」
凶器。
へリングの代物はそうとしか呼べないほど巨大で凶悪だった。あんなもので貫かれたら膣が裂けかねない。化け物かこいつは。
それでも淫乱なファティアナは笑顔を浮かべたまま股を開いた。重ねがけの淫術が膣をくつろげ、肉槍を待ち焦がれて涙をこぼしている。空いている――おなかの下に空洞がぽっかりと口を開いている。早くここを埋めてほしい。たとえこのカラダが裂けてもいい。
裂けてもいい――そのほうがいい。どうせ痛覚は魔術で消せる。俺は増幅した快感だけを受け取れる
のだ。肉体が壊れて苦しむのは俺じゃない。
「はやく」
声に、へリングは一度大きく吐息をついて、
――グジュッ!
「うっ……んぅううっ!」痛覚を消しているにも関わらず、全身を猛烈な衝撃が貫いた。でかいハンマーで股間をたたかれたみたいだ。ぐらぐらと視界が揺れる。
「ふ――っ、ふっ、はっ、はあっ、」
次いで、その衝撃を軒並み吹き飛ばす快感の嵐が襲ってきた。一刺しごとに襲いかかる衝撃が三重がけの魔術で増幅され、未知の快感になって神経を駆け抜ける。
ファティアナ・アーヴルヴァルトはあまり性に触れて来なかった少女だ。無知というわけではないし、興味もそれなりにあるようだが、しかし機会がなかった。自慰すらほとんど経験のない、真面目すぎる優等生だった。
そのファティアナに、この巨根はいかにも凶悪すぎた。オークの体が動くたびに、膣が壊されるような衝撃と音が響く。
グジュッ、グチャッ、ブジュッ――
肉が掘削されていく。本来ならば声も出ない激痛だろう。だが、
「あっ、ああぁあっ、んぁあああっ!」
痛覚を消し、感覚を三倍増している俺には、それは気が狂うほどの淫感として襲いかかる。
神経全部が性感になって、ひとかたまりになったそれをまるごとしごかれているようだ。
「あぅ、あっ、あぁああっ! ああぁああっ!」
へリングが笑っている。醜悪な顔だ。憧れて、畏れて、そして穢したいと願っていたファティアナを貪る自分に酔っているのだ。ファティアナ・アーヴルヴァルトは美しく聡明な、おそらくはトリオネイアの至宝だ。きっと未来には何か大きいことを達成しただろう。それも、そんなに遠い未来ではない。
それを、こんな下卑た男に穢されて、貶められている。
俺がそうしている。俺がそうされている。穢しているし――穢されている。
「ああぁっ、あっ、あぁあっ!!」
突かれるごとに神経は感度を増していく。へリングの凶器が触れるすべての細胞が一斉に震え、それが伝播して全身が嬌声をあげる。腰のひとふりで絶頂し、次のひとふりでまた達し、イキ狂う細胞たちが沸騰して神経を圧迫している。
その苦痛すら――快感だ。
何かにつかまっていないと振り落とされてしまう。 へリングに抱き着いてその首に手を回し、まるで恋人同士のように密着して、ファティアナのカラダは何度も何度も絶頂した。
きっと彼女の人生でこれほどの絶頂は初体験だろう。それを繰り返し、繰り返し、延々と何度も。
その快楽が、烙印となってカラダに刻まれるまで。
「お、おぉお、おぉおっ!」
野獣のおたけびのような声が聞こえる。へリングが達するのだ。汚いオークの子種液が、聡明で可憐なエルフの才媛に注がれる。
ファティアナが、致命的に穢される――
「出して、なかにっ、ナカに出してくださいっ!」
「お、おおおおっ!」
「私をぐちゃぐちゃにして!」
ドクッ!
「あっ、あぁあああ――――ッ!!」
腹の底を何か熱いものが叩いている。何度も、何度も、奥の奥まで染め上げようとするかのような長い射精。
汚辱が全身をめぐる。神経が腐る。清廉だった肉体はどうしようもなく堕落し、その絶頂と堕淫を記憶する。膣が震えて、つながったままなのにも関わらず、ごばっ、と大量の精液を吐き出した。
「ぁ、ぁあ、ぁあぁー……」
ゆっくりと筋肉が弛緩し、ずるりとへリングの体から離れる。萎れた凶器を引き抜いたへリングが、下卑た表情を浮かべたまま汚らしく笑った。
「ふぁ、ファティアナ。これでお前は、オレの女だ」
全身が震えてまだうまく喋れない。それでも俺はどうにかカラダを起こし、へリングに笑いかけた。
そうだ。これでふたりの力関係は確定した。女のカラダでのセックスは久しぶりで、リハビリにしては苛烈だったが、しかし堪能したし、耐えきった。
途中で意識を飛ばしていたら台無しだったからな。
笑って、俺は言った。
「違うぜ、オーク」
そう、ふたりの関係は決まった。もうこいつは、俺には逆らえない。
「お前が俺の、下僕になるんだ」
その瞬間、俺は
その魔術を発動させた。
「では――満場一致で、種族間の不均一な取り定めについての規則は可決となりました」
尖耳族
。
石傍族 。
人間族 。
亜人 。
妖精族 。
鬼族 。
獣族 。
竜族をのぞく全ての種族長が頷く。最後まで反対していたはずのオークとオーガが承認したことに幾人かは驚いているようだったが、当然の結果だ。
オーガの小娘は俺がファティアナを侵略していることを知っているし、オークはファティアナの魔術によって隷属契約を結ばせている。完全な下僕だ。
「ご存じのとおり、この契約書はそれ自体が魔術書です。契約が有効になれば、みなさんと、その種族におさまる全学生・職員がその対象です」
有効になれば、といったが、この状況から契約を反故にすることはできないし、させない。もはや状況は決したのだ。
「三日後の全校集会で契約の公布を行います。その瞬間から契約は有効になり――学院のあらゆる不平等は撤廃されるでしょう。みなさん、本当にありがとうございました」
俺の言葉に種族長たちが頷く。ああ、ありがとう。本当にありがとう。これでクソみたいな学院のクソみたいな連中を、クソの中に落としてやることができる。
「………」
オーガの小娘が俺を見ている。小さくうなずいて、計画の進行が順調であることを示すと、不審そうにしながらも頷き返した。あいつには契約書の魔術を見抜けないからな。書いてあることがそのままだったら、本当に不平等が撤廃されてしまう。不安になるのもわかる。
「それでは三日後に」
こうして種族長会議は解散し、平等法は成立した。
三日後――ファティアナ・アーヴルヴァルトは壇上に立ち、全校生徒の前で公布と演説を行う。
そう。
汚辱が全身をめぐる。神経が腐る。清廉だった肉体はどうしようもなく堕落し、その絶頂と堕淫を記憶する。膣が震えて、つながったままなのにも関わらず、ごばっ、と大量の精液を吐き出した。
「ぁ、ぁあ、ぁあぁー……」
ゆっくりと筋肉が弛緩し、ずるりとへリングの体から離れる。萎れた凶器を引き抜いたへリングが、下卑た表情を浮かべたまま汚らしく笑った。
「ふぁ、ファティアナ。これでお前は、オレの女だ」
全身が震えてまだうまく喋れない。それでも俺はどうにかカラダを起こし、へリングに笑いかけた。
そうだ。これでふたりの力関係は確定した。女のカラダでのセックスは久しぶりで、リハビリにしては苛烈だったが、しかし堪能したし、耐えきった。
途中で意識を飛ばしていたら台無しだったからな。
笑って、俺は言った。
「違うぜ、オーク」
そう、ふたりの関係は決まった。もうこいつは、俺には逆らえない。
「お前が俺の、下僕になるんだ」
その瞬間、俺は
その魔術を発動させた。
「では――満場一致で、種族間の不均一な取り定めについての規則は可決となりました」
竜族をのぞく全ての種族長が頷く。最後まで反対していたはずのオークとオーガが承認したことに幾人かは驚いているようだったが、当然の結果だ。
オーガの小娘は俺がファティアナを侵略していることを知っているし、オークはファティアナの魔術によって隷属契約を結ばせている。完全な下僕だ。
「ご存じのとおり、この契約書はそれ自体が魔術書です。契約が有効になれば、みなさんと、その種族におさまる全学生・職員がその対象です」
有効になれば、といったが、この状況から契約を反故にすることはできないし、させない。もはや状況は決したのだ。
「三日後の全校集会で契約の公布を行います。その瞬間から契約は有効になり――学院のあらゆる不平等は撤廃されるでしょう。みなさん、本当にありがとうございました」
俺の言葉に種族長たちが頷く。ああ、ありがとう。本当にありがとう。これでクソみたいな学院のクソみたいな連中を、クソの中に落としてやることができる。
「………」
オーガの小娘が俺を見ている。小さくうなずいて、計画の進行が順調であることを示すと、不審そうにしながらも頷き返した。あいつには契約書の魔術を見抜けないからな。書いてあることがそのままだったら、本当に不平等が撤廃されてしまう。不安になるのもわかる。
「それでは三日後に」
こうして種族長会議は解散し、平等法は成立した。
三日後――ファティアナ・アーヴルヴァルトは壇上に立ち、全校生徒の前で公布と演説を行う。
そう。
そこが仕上げだ。衆目の中で、彼女は徹底的に貶められ、破滅するだろう。
堅苦しいタイを外し、胸元を雑にはだけさせて、俺は吐息をついた。あと一歩だ。もう少しで終わりにできる――いや、始めることができる。
全員が退出した会議室、誰にはばかることもない。
「ふっ、くくく……」
声に出すと、実感があふれてきた。ファティアナを穢してやった。貶めてやった。あとは破滅させて、地獄に連れて行ってやればいい。
あと三日――やることは山積みだ。
さあ。
堅苦しいタイを外し、胸元を雑にはだけさせて、俺は吐息をついた。あと一歩だ。もう少しで終わりにできる――いや、始めることができる。
全員が退出した会議室、誰にはばかることもない。
「ふっ、くくく……」
声に出すと、実感があふれてきた。ファティアナを穢してやった。貶めてやった。あとは破滅させて、地獄に連れて行ってやればいい。
あと三日――やることは山積みだ。
さあ。
「さあ、復讐だ」
つづく
コメント
コメント一覧 (2)
もしかして最終的にはオークも落とすのかな。
種族をひとつずつ落としていくような展開を想定していますが、まあどこまでつづくかも含めてわりと流動的でございます…
のんびりお待ちくだされば幸いです