憑依もののえっちな小説です。
おわりです。

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 口元からよだれを垂れ流す柿村を見ながら、葵はその右足をゆっくりと床につけた。
 ――そう。
 葵はわずかに浮かせた足に全体重をかけて、そのまま柿村の秘部を、文字通り踏み潰したのだ。いくら幼い体とはいえ、耐えられるものではない。
 動かないはずの体を跳ねさせて、柿村は目を剥いて悶絶している。跳ねた拍子に体が横倒しになって、四肢の麻痺から解放されたわけでもないのに、両手足がビクビクと痙攣している。よほどの衝撃だったようだ。
「はは」
 動物園で面白いショーを見たときのように、二、三回遅いリズムで手をたたくと、葵は上履きを脱ぎ捨てた。白にワンポイントの入ったソックスもほうり捨てて、健康的な素足をさらす。今時の子供は偏平足も多いが、葵に限ってそんなことはない。足を傾けて土踏まずのラインを覗くと、彼女は満足そうにうなずいた。
「センセ、大丈夫か?」
「あ……あぅ……」
 大丈夫どころか、口から泡を吹いている。股間が急所なのは男だけではないということだ。
「しっかりしろよ」
 笑いながら言って、葵は先ほどまでと同じように、スカートの内側に裸の足を差し入れた。ただ、今度は布ごしに弄るなんて中途半端なところで止める気はない。潜り込ませた足をそのまま跳ね上げ、長いスカートをまくりあげてしまう。
 健康的に肉付いた太ももと、年齢を考えると少々色気の足りない下着があらわになる。顔を近づけて股間のあたりを覗いてみると、踏まれたせいで汚れてはいても、濡れているということはないようだ。
「ま、そりゃそうか。はいセンセ、脱ぎ脱ぎしましょうねー」
 にやにや笑って、いまだに忘我の淵から帰ってこない柿村の下着に指をかける。いくら小柄といっても葵よりはるかに大きな体で、しかも半ば気を失っている人間の下着を脱がせるのはなかなか難しい作業だったが、なんとか達成する。つま先から抜き取った下着をためつすがめつ観察して、とりあえずポケットに捻じ込んでおく。
「どれ、ご開帳」
 柿村の体を少しだけ動かしてスペースを確保すると、仰向けになった彼女の両足を片方ずつ持ち上げる。適当な資材を支えにして膝を立てた姿勢を維持させる――多少崩れてはいるが、おおむねM字開脚と呼ばれる体勢に整えることができた。
「おお」
 柿村菊の秘所は、度重なる刺激に怯えるように縮こまっていた。丁寧に処理しているらしい陰毛はふわりと淫裂を覆うように薄く茂り、その奥で肉襞が震えている。未経験とはいえ女性器は充分に成熟して、淡く性の香りをたちのぼらせていた。
 一度も異性が触れたことのないはずの秘部は誘うようにかすかに口を開き、隙間から大胆にビラビラが顔を覗かせている。
「どれ……」
 舌で唇を湿らせると、小さな細い指先をそっと足の付け根に触れさせる。そのまま指の腹を蛇行させて向かった先は、薄く色づいた窄まりだ。蟻の門渡りを辿って陰唇のふちへ。襞の形をなぞるようにゆっくりと指を伝わせ、時折指先で肉畝を弾きながら、やがて頂点へ至る。葵は「それ」を愛し気に撫でてから、優しくつまんだ。
「そろそろ起きな……!」

 きゅっ――

「いっ、ああぁあああぅっ!」
 途端、背中を仰け反らせて柿村が悲鳴をあげた。無理もない。葵が捻りあげたのは感覚の集合点ともいうべき神経の塊、まだ皮をかぶったままのクリトリスなのだ。
「な、なっ……は、はぁう……?」
 あまりの衝撃にぼろぼろと涙をこぼして、柿村は視線をめぐらせた。どうやら記憶がうまくつながっていないようだ。
「おはよう、センセ」
「はっ、はっ、あ、あい、藍町……さん……?」
 涙どころか涎までこぼして、不思議そうにつぶやく。葵が笑いかけると、困惑した表情がかえってくる。それから、たっぷり三秒の間をおいて、
「あ、あああ!」
 柿村菊は、やっと自分のおかれた状況を思い出したようだった。同時に、下半身丸出しの現状にも気がついたらしく、顔を真っ赤にして腰をひねっている。が、肝心の四肢は言うことをきかない。
「はは、反応おっせえ」
 残酷に笑って、葵はつうっ、とむき出しのふとももを撫で上げた。もれる悲鳴を愉悦に変えて、指先で陰唇からはみでる襞をつまみあげる。
「な――なに、なにしてるの……う、うそでしょう? おかし、おかしいわよ、こんなの」
「センセ、ちゃんとエロいまんこしてんのな。パイパンだったらどうしようかと思ってたんだよ」
「なんなの、なんで、な、なんでこんな……」
「センセ、聞いてる? だめだぜ、ちゃんと生徒の話はきかなくちゃ」
「あぅっ……」
 すこしだけ力をこめて、襞を引っ張る。ピクリと肩をふるわせる新任教師に笑顔を向けて、葵は開かれた足の間に、ずい、と顔を近づけた。
「やっ……み、見ないで、やめなさい!」
「センセ、意外と余裕あるなあ」
 両手を秘唇に添えて、左右に力をこめる。何が行われているのかを悟った柿村が悲鳴じみた声をあげたが、葵がいまさら、そんなものに斟酌するはずがない。
「くぱぁ」
 笑いまじりの擬音とともに、柿村の『女』が葵の前に姿を現した。
 押し込められていた淫臭が、ふわりと鼻をかすめていく。ある種グロテスクですらある肉畝は鮮やかなピンク色で、未踏どころか、自身の指すらろくに触れていないのだと知れた。膣口はかすかに入り口を覗かせてはいるが、指を二本もいれたら裂けてしまいそうなほど狭い。膜の有無までは確認できなかったが、彼女が処女なのは間違いない。なにせ本人の記憶が情報ソースである。
「マジでピンク色だ」
「ピンクって……」
「自分で見たことないの?」
「な、ないわよっ」
「あ、そう」
 興味なさげにつぶやいて、葵は、ほう、とため息をもらした。熱のこもった吐息が秘部をなでる感触に、柿村がかすかにうめき声をあげる。
「じゃ、味見な」
 たらり、とまっかな舌を垂らして、葵は歪んだ笑みを浮かべた。ぬらぬらと光る唾液を引き連れて、舌先がひたり、とくつろげられた蜜園へと踏み入る――
「ひぃっ!」
 ――その瞬間に柿村が味わった感覚は、今まで生きていて、おそらくはじめてのものだった。
 声をあげたのは、快感というよりは恐怖から。自分の体の内側に生き物がいる、という強烈な違和感が体の中心から血管を登ってくる。ただ触れているだけで吐きそうになるのに、そいつはぬちゃぬちゃと音を立てて這いずり回っているのだ。
「いや、いやっ、やめて! きもちわるい……!」
 悲鳴をあげて懇願しても、葵はまるでとりあわない。口内でそうしたように、全ての粘膜を舐め取ろうとするかのような執拗な舌愛撫を繰り返す。
 舌先にたっぷりと唾液をまぶして、丹念に襞に塗りつけていく。ぬらつく舌が一度往復するたびに、例えようのない嫌悪が背筋を這い上がった。
「……っ!」
 四肢が動かない柿村には、自分の体で葵の姿がよく見えない。得体の知れないものが自分の体に触れて、自分の体の中で蠢いている。縦横無尽に秘洞を荒らす『生き物』に、新任教師ははっきりと恐怖を覚えていた。
「藍町さん……」
 ふるえる声で名前を呼んだのは、自分が知っている相手だと確認したかったからだ。それなのに、向こうはまるでかまわずひたすら舌を動かしている。形を、味を、においを、柿村菊という女性をまるごと憶えようとするかのように。
 ぞくり、と冷たい感触が首筋から這い上った。
 この子は、本当に葵なのだろうか。本当に、あの葵なのだろうか。おかしいところはいくつもあった。本当は全然知らない別の誰かなのじゃないだろうか。いや、もしかしたら、もしかしたら、
「人間、じゃ」
 ぐにゃり、と世界が歪曲する。言葉にできない畏怖が、柿村の心臓をわしづかみにして放さない。理性が浸食されて、現実感が乖離していく。そうしてなにもかもが曖昧になった世界で、
「ふぁ……っ?」
 じわりと染み込むような、その感覚だけが明瞭になっていく。
 尿道の形をひとしきり確かめて、舌先は膣の入り口をこね回している。さんざん触れ合った両者は、もう互いの形を完全に憶えている。ぐちゅぐちゅといやらしい音を立てて蠢くその舌先から感じるのは、身の毛もよだつ恐怖と、わずかの甘み。
 甘く香る嫌悪が、柿村の腰を浸していた。
「ふっ、ふう……」
 葵の幼い舌からほのかに伝わる熱と、びちゃびちゃと汚い音を立てる淫唾と、時折ささやくようにふりかかる熱い吐息とが、柿村の思考回路を徐々に混濁させる。なにもかもがおかしい。現実感がどこかに飛んで行ったまま、ちっとも帰ってこない。
「ふぅ、ふぁ……ぁあ……」
 激しい舌愛撫についばむようなキスが混ざりはじめた頃には、ひくつく秘部からこぼれ落ちるのは唾液だけではなくなっていた。唾蜜はしぶとくうずく嫌悪を溶かして、柿村から最後の抵抗心を奪ってしまう。動かない四肢を投げ出し、弛緩した全身を横たえて、ひびく淫音に身を委ねる。
 股間から膣道を巡って子宮にたまり、染みだすように全身を冒すのは、もはや嫌悪ではなくなっている。これは、そうこれは――
「きもちいい?」
「……え?」
「きもちいい?」
「ああ……」
 そうだ、これは、
「うん、きもちいい……」
 これは、快感――だ。

 ぢゅぐっ――

「ああぁああっ!?」
 そう認めた瞬間、それまでの全てを吹き飛ばすような激烈な感覚が柿村を襲った。何が起こったのかわからない。それは、体を素通りして神経をそのまま捻られたような、未経験の衝撃だった。
「な、は、あぁあああっ!?」
 何かを言う前に、快感の津波が再び思考を押し流す。すこしずつすこしずつ、丁寧に染み込ませるようなそれまでのものとは違う、飲み込まれたらあとには何も残らないような、全身を浚う快感。
 ――柿村菊にはわからない。葵の幼い唇がクリトリスをついばみ、震える淫豆を白い歯で甘く噛み締めたのだということも――
「あっ、あぁっ、ふ、ふぁ……!」
 声を抑えることもできない。そんなことに頭が回るはずがない。押し寄せる快感は許容範囲をはるかに越えて、全身の血管を逆流して心臓に襲いかかる。胸が痛い。息ができないほどだった。悦楽の波は柿村の神経を蹂躙して、感覚という感覚を奪っていく。それなのに、まるで全身が性感帯になったかのように、快感だけはひたすら強くなっていくのだ。
 ――柿村菊にはわからない。その一撃が堤防を突き崩し、柿村菊の脳髄はすっかり桃色の激しい刺激にとろけているのだということも――
「あぁあ、ああ、あ、あ、あ、ふあぁあっ、」
 どろどろに溶けた脳髄と、全身から吹き出る汗と、ぬりたくられた唾液と、そしてあふれる愛液がひとつになって、今の柿村を形作っていた。液体という液体が絡まり合い、むき出しにされた神経は快感だけを受信する。自分の声すら聞こえない。いつの間にか自由の戻った指先が切なげに床を引っ掻き、むさぼるように腰が踊る。体の中で起こる快楽の小爆発は、間もなく訪れる激発への予兆だと、柿村にもわかっていた。その瞬間を焦がれるように、流れるあとにすら愉悦を覚える涙をこぼして、柿村は喘いでいる。
 ――柿村菊にはわからない。塗りたくられた唾液全てがまるで極上の媚薬のように熱をもって秘奥をふるわせ、未踏の膣が淫猥に口を開いているということも――
「あぁ、ん、んぁああ、んはあぁあああっ!」
 ぢゅるぢゅるぢゅる、とそれだけで蜜をこぼすような淫音を立てて、葵が柿村の女性を吸い上げる。腰を跳ね上げ、体を踊らせ、緩んだ笑みに涙を交えた半狂乱の表情で、柿村が嬌声をあげる。この瞬間だと、二人ともそう思っていた。柿村の全身に注ぎ込まれた快楽は、一点を目指して疾走する。背筋を駆け上がり、脳天へ辿りつき、そうして彼女の世界が真っ白になった瞬間。
 ひときわ強く、甘く、ためこんだ快楽をまき散らすように、葵はその淫芽を捻り上げた。

「あ、あ、あぁあああぁあああ――――っ!」

 忘我の叫びをあげて、柿村は達した。魂すら抜け出るような快感の波が、彼女を洗い流していく。
 ――柿村菊にはわからない。わかるはずがない。その絶頂が――
「じゃ、……いただきます」
 ――彼女の全てを奪うということも。

**

 ……曖昧な意識が、ふわふわと戻ってくる。
 うっすらと目を開いた葵は、半ば惚けたような表情で周囲を見回した。暗く、狭く、ホコリっぽい空間。物が多いが整理されていて、ごちゃついてはいても散らかっているという印象は薄い。
「……資料室?」
 答えがすぐに出たのは、それがついさっきまで自分がいた場所だったからだ。半身を起こして、妙に痛む頭を抑える。全身がだるい。特に顎のあたりが疲労を訴えてくる。どうすればこんなところがこんなふうになるのだろう。
「におう……」
 なにか、濃密なにおいが鼻をつく。これまでに嗅いだことのないような、いわく言いがたい香りだった。ツンと鼻孔を刺激して頭の奥を突き刺すソレは、間違いなく知らないにおいなのに、なぜか体に馴染むような気がした。
 ――自分は、倒れていたのだろうか?
 ここで、葵はやっとその疑問にたどり着いた。うまく力の入らない体をどうにか持ち上げて、視線をさまよわせる。ここには柿村先生と一緒に来たはずだ。それで……そう、それで、彼女が味わっている苦痛について、相談しようと思っていたのだ。結果どうなったのだろう? きちんと先生に話をできたのだろうか。うまく思い出せない。
「柿村……先生?」
 狭い資料室の中、探すまでもなく教師がいないことはすぐにわかる。あのあとすぐに自分が倒れたのだとして、柿村先生はそんな自分を放っておくだろうか? それとも、今誰かを呼びに行っているのだろうか。
「………」
 違和感があった。それは、ここ数日感じ続けていたものと同種の感覚だ。じわじわと心臓からやってくる、吐き気にも似た嫌悪感。
 眉をしかめて、葵はそれでも顔をあげた。ともかくここでこうしていても仕方がない。とりあえず柿村先生を探して、
「――ああ、起きたの」
 ……そこで、扉が開いた。薄く微笑んだ柿村菊がこちらを見ている。
「突然倒れるから心配したのよ」
「あ、すいません」
「とりあえず保健室に行きましょう。話はしてあるから」
「でも、今はもう……」
「いいから。相談のことは放課後に、しっかりみんなと話し合いましょう」
「……」
 相談。
 柿村の言葉を聞く限り、どうやら話すべきことは話していたようだ。その安堵から気が抜けて倒れてしまった……そういうことだろうか。そんな軟弱な精神をしていたつもりはないのだが、しかしここ数日の友人達の態度に参っているのも確かだった。自分でもわからないうちに疲労がたまっていたのかもしれない。
「いいわね?」
「はい……」
 珍しく強い語調で言う柿村に気圧されるように、葵は頷いた。違和感はある。疑問も残っている。それでも、この状況を先生がなんとかしてくれるのだと、葵はどこか安心していた。
 先生に話したのだからもう解決だと、そう思っていた。
「……く、くく」
 そうして保健室へ入って行く小さな背中を見送って、柿村菊はこらえきれなかったように笑い声を漏らした。教師なんて物わかりの悪い大人に丸投げして終わった気になっている馬鹿な子供を、さっきから笑い飛ばしたくて仕方がなかったのだ。
「くふふ……」
 ここは学校だ。
 声を抑えながら、大股で廊下を闊歩する。急ぎ足の理由はふたつ。今すぐ個室に入らないと、笑い声をとどめておけない。そしてもうひとつ。
「んふぅ……柿村センセったら、淫乱なカラダだな、オイ」
 むき出しの秘部からこぼれ落ちる愛蜜を、どうにかして処理しなければならなかった。


おわり?