ゼンマイ式倉庫

フカミオトハが適当にいろいろ置いたり喋ったりするブログです。 リンクフリーです。あまりそういうものはないかもですが一応R18。

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 便意とは自分勝手な恋人だ。
 こちらの都合を全く考えず、来てほしい時には全然来ないくせに、絶対に来てはいけないという時に限って唐突に現れて体と心をめちゃくちゃに振り回す。最悪だ。DVだ。今すぐ別れるべきだ。健康で安定した食生活と睡眠が必要だ。
(――それができたら、苦労しない!)
 というわけで、早朝の満員電車の中、時原桐花は腹を抱えていた。これが爆笑の比喩だったならどんなによかったか。もちろん、文字通り両腕で腹を抱えこんでうめいているのが現実だった。なにも喩えていない。そのままだ。
 出がけに飲んだスムージーがいつになく効いたのか、それとも季節の変わり目でおなかが冷えたのか、あるいは理由なき胃腸の反乱か――いずれにせよ、改札を通る瞬間の肛門のうずきはもはや痙攣に近くなっており、打ち上げられた魚のようにせわしなく開閉を繰り返す菊門はいつ決壊してもおかしくない。下腹部はゴロゴロと遠雷のような唸り声をあげて、臓物を雑巾絞りするような鈍痛は渦を巻きながら三日分のナニを押し出そうとしている。これが寝起きの自室で起こったのならば、諸手を挙げて喝采したものを!
(死ぬ――このままじゃ死ぬ!)
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 ペンが落ちた。
 机の上でカラカラと転がる百均のシャーペンは、教科書にあたって動きを止める。落ちた拍子に、ノートの端に鉛筆の跡が残ってしまった。
(……なんだ?)
 心中つぶやいて、私はかすかに首を傾げた。授業中に小手先でペンを遊ばせて、結果机に落としてしまうのはいつものことだ。しかし今の一瞬には違和感があった。
 指が動かなくなった、ような。
「……?」
 わきわきと五本の指を動かしてみる。指は思った通りに動いた。気のせいだろうか。落ちたペンを拾ってノートの端にさらさらと文字を書く。あいうえお。うん、いつもの字だ。
(気のせいかな)
 顔をあげる。退屈な授業はのろのろと進み、黒板がちまちまと埋まっていく。私はどちらかといえば不真面目な生徒だと自分を疑っているが、板書をとる程度にはやる気がある。結局これはまじめってことなのかな。
 アヘン戦争とかいう地獄に地獄を重ねてイギリスをぶっかけたみたいなひど過ぎる歴史を文字に起こしているうちに、またしてもペンを取り落とした。どうしたのだろう。拾う。書く。落とす。拾う。書く。落とす。なんだ? これはもう明らかにおかしい。病気か? 私死ぬの?
 余命宣告にあらがうように、もう一度ペンをとる。ノートに向き合って気合いをいれると、いつものように指先を動かした。さらさらとペンは動き、

 ――おまえ を うばう

「はっ?」
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 第三金曜日の放課後は『部室』に集まることになっている。
 いつ、どこで、だれが決めたのかはわからないが、ずっと昔からそうと決まっているらしい。遊びにはルールが必要――これは今の部長の言葉だったか。
 『部室』は駅から歩いて十分ほどの住宅街にある。六階建てワンルームマンションの、最上階の角部屋。スーパーはやや遠いがコンビニが目の前にある便利な立地で、俺はいつもこのコンビニで飲み物やらを買っていく。オートロックの入り口を合鍵で開けて、エレベーターにもぐり込む。狭苦しい箱の中で独りになると、俺はかすかに息をついた。別にまだ何もしていないのだからビビる必要はないのだけど、ここに来るたびに妙に緊張する。
 六階のボタンを押すと、かすかな揺れのあとにエレベーターが上昇しはじめる。さして新しくも豪華でもないが、立地は悪くない。借りたらなかなかの値になりそうだが、月々の家賃も、光熱費も、全部部長が払っているというから驚きだ。
 部室――とは言うが、もちろん部活動とは関係ない。俺は帰宅部だし、メンバーのほとんどがそうだ。放課後に群れる駄弁り部屋というのが実情に近い。
 だがそれも、正確ではない。
 チン、という高い音とともにエレベーターが停止する。鈍重に開く扉をくぐって廊下に出ると、まっすぐ目的の部屋に向かう。エレベーターの反対側、非常階段のすぐ隣、他の部屋と少しだけ広く間隔をとった角部屋――何をやってもバレない、そういう場所。
 心臓が高鳴っている。スマートフォンを取り出して連絡アプリを起動する。特に誰からもメッセージは来ていない。つまり、今日も開催しているということだ。
 この活動に予定はない。時間も決まっていない。第三金曜日という慣習に従って、みんな黙って集まるのだ。もう何度も来ているのに、今更のように手が震える。カチカチと鍵と鍵穴がぶつかりあって音を立てる。まるで臆病者の俺を笑っているようだった。
 無理やりブチ込んで嘲弄する鍵穴を黙らせると、俺はドアノブを捻った。ゆっくりと開く。人ひとりがすべりこめる最低限の空間ができると、意味もなく周囲を確認してからそそくさと部屋の中にもぐりこんだ。
「うわっ……」
 とたん、濃密な匂いが鼻を直撃した。
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 手が動かない。
 部室で目覚めた百田未悠は、自分の右腕を見て首を傾げた。曖昧で茫洋とした意識が、混濁した記憶の中から眠る直前の出来事を呼び起こす。
 ここは文芸部室で、自分は文芸部員だ。会議用の長机がふたつ向き合うように並べられている小さな部屋で、後ろの壁一面を大きな本棚が埋めている。その対面の棚には歴代の文芸誌がきれいに収納されていて、脇には二か月まえに持ち込んだ電気ケトルが鎮座ましましている。それを使ってお茶をいれてくれる副部長も、一緒にいたはずの部長の姿も今はない。未悠ひとりきりだ。机の上では銀色の鍵が、窓から差し込む夕日にキラキラと輝いていた。
(先に帰ったのか――)
 目の前には読みかけの本が置かれている。ハードカバーの海外SFは、ちゃんと閉じられて スピン も挟まれている。寝入ってしまった自分のために部長がやってくれたのだろう。
(……で)
 夕暮れに赤く照らされる部室で、未悠は改めて首を傾げた。状況はわかった。ちゃんと目も覚めた。なのに、この手が全く動かない。白い半袖のブラウスから伸びた細い腕は、意思に反してうんともすんともいわない。
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侵略のデモン(1)←



侵略2-0
尖耳族
オーク
石傍族ドワーフ 人間族ヒューマ 亜人デミ 妖精族ホビット 鬼族オーガ 獣族セリアンスロープ
侵略2-8
そして、長耳族エルフ

 トリオネイア総合学院の種族長たちが一堂に会するさまは、なるほど壮観だった。
 居並ぶ重鎮に向けて、俺は書類を示す。すでに全員の署名がほどこされたそれは、学院の今後を大きく変える一枚だ。

侵略2-9
「では――満場一致で、種族間の不均一な取り定めについての規則は可決となりました」 

 聞いているだけで酔いしれるような声がそう告げる。納得したように頷くもの、安堵の息をつくもの、疑わしげに眉をひそめるもの、下卑た笑みを浮かべるもの、その反応はさまざまだ。

 だがいずれにしろ全ては決した。生徒会長ファティアナ・アーヴルヴァルトの尽力と根回しにより、かくて学院に蔓延していた種族間差別は撤廃されたのだ。

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