ゼンマイ式倉庫

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 僕が一宮日夜子と出会ったのは、中学校二年生の時だ。卒業式だった。
 出会ったというのは正確ではないか。僕が一方的に彼女を知ったのが、というべきだ。
 中学校の卒業式――三年生の先輩方を送り出す正門前で、一宮は真っ赤な顔で第二ボタンをもらえないかと頼んでいた。地味なふたつしばりで面白味のない眼鏡をかけた、スカート丈の長すぎる女子。それが一宮だ。相手は当時人気のあったバスケ部の先輩で、お前それは無理だろうと誰もが思っただろう。
 事実無理だった。
 先輩は笑いながら(笑いながらだ)、彼女がいるからと断った。一宮は泣きそうな顔で、それでも笑顔で、めいわくかけてごめんなさいと言ったのだ。
 かわいいと思った。かわいそうだと思った。
 それが僕と一宮日夜子の出会いで、僕の、たぶん一目惚れの瞬間だった。
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 バレンタインデーとかいう製薬会社に踊らされたアホどもの祭りを心底軽蔑していた私が二月十三日の夜に必死こいてチョコレートを湯煎しているのがなぜかと言われれば、それはもちろん彼氏ができたからに他ならない。
 彼氏ができました!
 いやほんと、世の中っていうのはいつだって予想を裏切る驚きに満ちていて、満ち満ちていて、私ってば制御できない感情の渦に翻弄されっぱなしなのだ。はあ、アキラ君とそういう関係になるとはね。アキラ君なんかと。三年前の私に言っても信じないだろう。殺されるかもしれない。
 告白されたのが初詣で、つまりバレンタインデーは二人にとって最初の大きなイベントだ。滾る。ここで盛り上がらなければ現役JKやってる甲斐がないってもんだ。
 バレンタインデー最高! チョコレート万歳! 製薬会社の陰謀とか、モテないやつのひがみだよね!
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途中で止まったままかなりの(何年もの)期間があいてしまい、続き書く気が全くなくなってしまった没小説から、それなりにまとまってるものを供養しようシリーズ。

いつもの憑依もの。いつものというが、かなり初期に書いたやつ。

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SWITCH(仮題)

 高崎優花はいつも、携帯電話のアラームで目を覚ます。一度では起きられないのでスヌーズを設定して、鳴り出してからたっぷり三十分はためらってやっと布団から抜け出すことに成功する。それが優花の、いつもの朝だ。
 これは家族に大変不評で、だいたいいつもスヌーズの途中で一度声をかけられる。中学にあがった時部屋に鍵を取り付けたから、無理矢理起こされることこそないが、扉の向こうからかけられる家族の声が優花にはうっとうしくて仕方がない。
 だが、この日はそんないやな思いをせずにすんだ。
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 単刀直入に言おう、憑依能力を手に入れた。
 どうやって手に入れたかって? そんな細かいことはいいだろう。そういうのは真面目でお堅いやつがやってくれる。話は早いに越したことはない。大事なのは結果だ。
 憑依能力――言葉の通り、異なる他人に憑依する能力だ。肉体から魂が(あるいは意識が)抜け出し、標的のカラダを奪う。感覚も意識も全てを奪う。違う他人を乗っ取るチカラだ。
 難点は相手を選べないこと。
 範囲は決まっている。だいたいこの町か、せいぜい隣町くらいの中から完全にランダムで相手が選ばれるのだ。
 だが大抵の場合は問題ない。なぜならこれは『異性に憑依する力』だからだ。女だったらなんでもいい、なんでも。細かいこととか悩ましい葛藤とかは真面目でお堅いやつにお任せだ。大事なのはマンコだ。考えてもみろ、ブスだから感度が悪いってことはないんだぜ。どうせ自分の顔は自分じゃ見えねえんだ。
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 便意とは自分勝手な恋人だ。
 こちらの都合を全く考えず、来てほしい時には全然来ないくせに、絶対に来てはいけないという時に限って唐突に現れて体と心をめちゃくちゃに振り回す。最悪だ。DVだ。今すぐ別れるべきだ。健康で安定した食生活と睡眠が必要だ。
(――それができたら、苦労しない!)
 というわけで、早朝の満員電車の中、時原桐花は腹を抱えていた。これが爆笑の比喩だったならどんなによかったか。もちろん、文字通り両腕で腹を抱えこんでうめいているのが現実だった。なにも喩えていない。そのままだ。
 出がけに飲んだスムージーがいつになく効いたのか、それとも季節の変わり目でおなかが冷えたのか、あるいは理由なき胃腸の反乱か――いずれにせよ、改札を通る瞬間の肛門のうずきはもはや痙攣に近くなっており、打ち上げられた魚のようにせわしなく開閉を繰り返す菊門はいつ決壊してもおかしくない。下腹部はゴロゴロと遠雷のような唸り声をあげて、臓物を雑巾絞りするような鈍痛は渦を巻きながら三日分のナニを押し出そうとしている。これが寝起きの自室で起こったのならば、諸手を挙げて喝采したものを!
(死ぬ――このままじゃ死ぬ!)
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